ロブロックスが広告で大人を集める理由は?決算とTikTok広告1.2万本から読む成長戦略【2026年版】

ロブロックスが、18歳以上の利用者を集めるために広告を大きく増やしています。
欧州などで TikTok に出したロブロックス名義の広告は、2026年7〜9月だけで1万2,692本。
この記事では、TikTok が公開している広告の記録を当社で数え直し、ロブロックスの決算資料と突き合わせました。
「13歳以下向けで最大のゲームの場」を自ら名乗ってきた会社が、いま何にお金を使っているのかを数字で追います。
ロブロックスの広告は「13〜17歳向けがゼロ」

TikTok は、欧州などで配信した広告の中身と配信先を「商用コンテンツライブラリ」として公開しています。
広告主の名前、配信した国、対象にした年齢と性別まで、誰でも確かめられる仕組みです。
対象になっているのは EU の加盟国に英国・スイス・トルコなどを加えた33か国で、最後に表示されてから1年間の広告が残ります。
そこで広告主「ROBLOX CORPORATION」の広告を、最後に表示された時期ごとに数えました。
| 最後に表示された時期 | 広告の本数 | うち13〜17歳を対象に含むもの |
|---|---|---|
| 2025年10〜12月 | 1,209本 | 0本 |
| 2026年1〜3月 | 2,250本 | 0本 |
| 2026年4〜6月 | 0本 | 0本 |
| 2026年7〜9月 | 12,692本 | 0本 |
1年分をさかのぼっても、13〜17歳を対象に含む広告は1本もありません。
反対に「18〜24歳」で絞ると、7〜9月の1万2,692本がそのまま全部残ります。
本数の動きにも特徴があります。
1月31日を最後にいったん止まり、4〜6月は1本も出ていません。
そして7〜9月に、前年10〜12月の約10倍の本数で再開しています。
なお本数は広告の数であって、使った金額ではありません。
ほかの会社の広告との違い
ここで確かめておくべきなのは「欧州の決まりで、もともと未成年に広告を出せないのではないか」という点です。
そこで同じ期間のほかの広告主の広告も調べました。
「game」を含む広告を同じ期間・13〜17歳で絞ると、表示の上限の5,000本まで結果が出ます。
実際に開いたゲームアプリの広告では、オーストリアの13〜17歳の男女に配信された記録が残っていました。
つまり13〜17歳を外しているのは、ロブロックス自身の選択です。
利用者の7割以上が18歳未満の会社が、有料で集めにいく相手を18歳以上に絞っています。
国ごとの本数
7〜9月の広告を、配信先の国で分けると次のとおりです。
1本の広告が複数の国に配信されることがあるため、合計は全体の本数と一致しません。
| 配信先の国 | 広告の本数(2026年7〜9月) |
|---|---|
| 英国 | 2,086本 |
| フランス | 2,029本 |
| ドイツ | 1,628本 |
| イタリア | 718本 |
| スペイン | 688本 |
| オランダ | 616本 |
| ポーランド | 0本 |
英国・フランス・ドイツの3か国が突出しています。
調べた7か国のうち、ポーランドには1本も配信されていません。
広告の中身
当社が開いた広告には、配信者が画面に出てゲームを紹介するものと、ゲームの画面だけで見せるものがありました。
どちらも縦長の動画です。
ゲームの画面だけの広告には、左上に「ROBLOX|Dueling Grounds」とロブロックスの中の個別のゲーム名を出しているものがあります。
こうした広告は、ロブロックスという場所ではなく、そこで遊べる1本のゲームを入口にしています。
行き先はアプリストアです。
当社が開いた英国向けの広告では、リンク先がロブロックスの Google Play のページになっていました。
18歳以上を狙う理由
理由は、ロブロックスが四半期ごとに出している株主向けの報告書に書かれています。
2026年6月30日締めの四半期の報告書から、関係する数字を抜き出しました。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 年齢確認を済ませた利用者のうち18歳以上 | 27%(米国では約3分の1) |
| 米国の18歳以上の1日あたり利用者の伸び | 前年比+32% |
| そのうち18〜34歳の伸び | 前年比+42% |
| 米国の18歳以上が使う金額 | 18歳未満より50%以上多い |
| 世界のゲーム市場(年約2,000億ドル)の支出に占める18歳以上 | およそ80% |
ゲームにお金を使っているのは、市場全体で見ると大人です。
ロブロックスは世界のゲーム売上の約4%を占め、これを10%まで広げることを目標に掲げています。
報告書は、この目標について「年上の利用者を広げることが、10%の目標の中心にある」と書いています。
ピークから約2割減った利用者
もう1つの背景は、利用者が2025年のピークから減ったことです。
1日あたりの利用者は、2025年7〜9月の1億5,150万人から、2026年4〜6月には1億2,300万人まで下がりました(前年同期よりは10%多い水準)。
ロブロックスは2026年1月7日から、チャットを使うすべての利用者に年齢確認を求めています。
1〜3月の報告書は、この年齢確認が新しい利用者の獲得を鈍らせたと明記しています。
さらに7〜9月については、ブッキングス(利用者が支払った金額)が前年より14〜18%減るという見通しを出しました。
売上高のほうは前年より4〜10%増える見通しで、これは支払われた金額を、課金する利用者の平均利用期間(27か月)にわたって少しずつ計上する会計の決まりによるものです。
おすすめの仕組みを「長く遊ばれるゲーム」を優先する形に変えたことも、目先の支払い額を押し下げた理由として挙げられています。
作り手への上乗せ
ロブロックスは、集めた大人が遊ぶゲームの作り手にも見返りを用意しました。
2026年4〜6月期から、米国の18歳以上が使ったお金について、対象のゲームの作り手が受け取る換金率を42%引き上げています。
9月の開発者会議(RDC)では、この上乗せで収益が10%以上増えたゲームが2,000本を超えたと発表されました。
広告で大人を連れてくる側と、大人向けのゲームを作る側の両方に手を打っています。
広告費の実額

ロブロックスの決算書には、広告費そのものの金額が年ごとに載っています。
販売・マーケティング費に含まれている、広告にかかった費用です。
| 年 | 広告費 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2023年 | 3,830万ドル | — |
| 2024年 | 4,540万ドル | +19% |
| 2025年 | 7,920万ドル | +74% |
2025年は1年で1.74倍になりました。
2026年に入ってからも、1〜6月の広告・販促費は前年同期より1,700万ドル増えています。
売上に対する広告の重さ
一方で、会社の規模に対する広告の比率は大きく動いていません。
販売・マーケティング費(人件費を含む)をブッキングスで割ると、次のようになります。
| 四半期 | 販売・マーケティング費 | ブッキングス | 比率 |
|---|---|---|---|
| 2025年1〜3月 | 4,800万ドル | 12億671万ドル | 3.98% |
| 2025年4〜6月 | 5,300万ドル | 14億3,763万ドル | 3.69% |
| 2025年7〜9月 | 6,713万ドル | 19億2,182万ドル | 3.49% |
| 2025年10〜12月 | 7,847万ドル | 22億2,228万ドル | 3.53% |
| 2026年1〜3月 | 6,400万ドル | 17億3,100万ドル | 3.70% |
| 2026年4〜6月 | 6,100万ドル | 15億5,700万ドル | 3.92% |
ブッキングスが前の四半期より減った2026年も、比率は4%前後で保たれています。
4〜6月の販売・マーケティング費は前年より15%増え、うち400万ドルが広告・販促、300万ドルが人員の増加によるものです。
TikTok の本数が大きく増えたのは7〜9月です。
この増加が金額としてどこまで表に出るかは、次の決算(7〜9月分)で確かめられます。
開発者会議で語られた広告の結果
ロブロックスは2026年5月14日、会社として初めて「チーフ・グロース・オフィサー(成長の責任者)」を置き、John Ciancutti 氏が就きました。
9月の開発者会議の基調講演で、同氏はこの夏の広告の結果を話しています。
- 本数:夏のあいだに、米国で18歳以上を狙う新しい広告キャンペーンを200本以上試しました
- 費用対効果:その大半が、保守的に決めた投資対効果の基準を満たすか、上回りました
- 定着:スマートフォンでは、これまでの広告より初回の利用と継続の割合が高くなっています
同氏は「一度きりの試しではなく、成長を加速させる通常の手段にできる」と述べています。
欧州の TikTok で7〜9月に本数が跳ね上がった動きと、時期がそろっています。
求人に出ている予算の規模
ロブロックスの採用ページには、この広告を動かす担当者の求人が2件出ています。
担当する広告の出し先は Google・YouTube・Meta・TikTok・Apple の検索広告・DSP(広告の自動買い付けの仕組み)です。
望ましい経験として「年間1,000万ドル以上の有料広告の運用」が挙げられています。
TikTok は、複数ある出し先のうちの1つという位置づけ。
同じ採用ページには、インフルエンサー施策の担当者の求人も3件あります。
担当の仕事には、配信者への依頼内容の作成から投稿の調整、成果の集計までが含まれています。
日本から見たこの動き
この記事で数えた TikTok の記録は欧州などの33か国が対象で、日本の配信は含まれません。
一方で、決算資料と採用ページには日本についての記述があります。
日本の伸び
2026年4〜6月の日本の1日あたり利用者は前年より67%、遊ばれた時間は61%増えました。
米国・カナダは利用者が6%、時間が1%の伸びで、日本の伸びが際立っています。
ロブロックスは2026年9月23日(米国時間)、東京勤務の「日本の事業開発責任者」の求人を出しました。
仕事の中身は、日本の人気の作品(IP)をロブロックスに呼び込むことと、コンビニエンスストアなどでのプリペイドカードの販売を伸ばすことです。
公開中の求人262件のうち、勤務地が日本のものはこの1件です。
欧州・インド・東南アジアにはそれぞれマーケティング担当の求人が出ています。
日本と米国で遊ばれているゲームの違い
日本向けの企画を考えるなら、日本と各国で同じゲームがどれだけ遊ばれているかを先に知っておく必要があります。
そこで当社が運営するロブロックス情報サイト「メタニュー」の最新の国別ランキングで、日本と各国の上位50本が毎日どれだけ重なるかを、2026年8月20日から9月29日までの40日間数えました。
| 比べた国 | 9月29日 | 40日間の幅 |
|---|---|---|
| 台湾 | 29本 | 26〜38本(9月3日から27日間) |
| 英国 | 28本 | 21〜35本 |
| 米国 | 26本 | 21〜33本 |
| フランス | 26本 | 21〜38本 |
| ドイツ | 26本 | 24〜39本 |
| 韓国 | 23本 | 21〜37本 |
| インドネシア | 22本 | 22〜35本 |
| フィリピン | 17本 | 17〜36本 |
米国と同じゲームは9月29日で26本、40日間で見ても毎日21〜33本でした。
日本の上位50本のうちおよそ半分(毎日17〜29本)は米国の上位50本に入っていません。
順位は毎日入れ替わるため、上の表は測った日の値です。
いちばん近い国も日によって変わり、40日間そろって比べられる7か国では、ドイツが40日のうち23日でいちばん多く重なりました。
9月29日の日本の1位「Ride A Pet」は、米国でも8位に入っています。
広告に出ていた「Dueling Grounds」は、日本のランキングで8月26日から9月14日のあいだに最高17位まで上がりました。
米国での最高は26位(8月28日から9月19日のあいだ)で、日本のほうが上の順位を取っています。
日本の企業にとっての意味
ロブロックスは、新しい利用者を連れてくるゲームをおすすめで優遇する仕組みを試していると、開発者会議で明かしています。
大人の新しい利用者を呼び込める企画は、いまのロブロックスの方針と向きがそろっています。
ただし、米国で当たっているものをそのまま持ち込んでも、日本の上位と重なるのは40日間を通して50本中21〜33本でした。
日本向けの企画は、日本のランキングを見て決めるのが確実です。
よくある質問
ロブロックスの利用者は子どもが中心ですか?
年齢確認を済ませた利用者のうち、13歳未満が35%、13〜17歳が38%、18歳以上が27%です。
米国に限ると18歳以上は約3分の1で、18〜34歳の利用者は1年で42%増えています。
ロブロックスの広告はどこで確かめられますか?
TikTok の「Commercial Content Library」で、広告主の名前から検索できます。
アカウントは不要で、配信先の国・年齢・性別と、表示した人数の目安まで見られます。
ロブロックスの広告は、なぜ特定のゲームを出しているのですか?
当社が開いた広告には、ロブロックスの中の1本のゲームを名前入りで見せるものがありました。
開発者会議では「大人のゲーマーが好むジャンルの、じっくり遊べる内容」を広告に使ったと説明されました。
ロブロックスの広告費はいくらですか?
決算書に載っている広告費は、2025年の1年間で7,920万ドルです。
これとは別に、人件費などを含む販売・マーケティング費は2025年に2億4,617万ドルでした。
まとめ:大人を集める広告は、まだ始まったばかり
この記事では、TikTok に残る広告の記録と決算資料を突き合わせ、ロブロックスが18歳以上に絞って広告を増やしている姿を追いました。
欧州の TikTok だけでも7〜9月に1万2,692本、しかも13〜17歳向けは1本もありません。
ロブロックスは、18歳以上の利用者を広告で集め、その利用者が使ったお金には作り手への上乗せを払う形をとり始めました。
日本は1年で利用者が1.67倍になった市場なので、日本のランキングを見ながら、いまのうちに企画の型を決めておきましょう。
