近年、メタバースという言葉をよく耳にするようになりました。
特に、FacebookがMetaへと社名を変更して以来、多くの企業がメタバースへの参入を表明しています。
しかし、メタバースの活用は、ゲームやエンターテインメント業界だけにとどまりません。実は、飲食業界でもメタバースの活用が急速に進んでいるのをご存知でしょうか？
本記事では、飲食業界におけるメタバースの活用事例や、そのメリット、そして今後の展望について詳しく解説します。
メタバースとは：仮想空間の新たな形
まずは、メタバースの基本的な概念について簡単におさらいしましょう。
メタバースとは、簡潔に言えば、インターネット上に構築された3次元の仮想空間のことを指します。この空間内で、人々は様々な活動を行うことができます。
メタバースの語源は、「超越」を意味する「meta」と「宇宙」を意味する「universe」を組み合わせた造語です。興味深いことに、この言葉が初めて使用されたのは、1992年にニール・スティーヴンスン氏が発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」においてでした。
メタバース空間では、ユーザーは「アバター」と呼ばれる自身の分身を通じて活動します。このアバターを操作して、他のユーザーとコミュニケーションを取ったり、様々な経済活動を行ったりすることができます。例えば、友人との会話、イベントへの参加、スポーツ観戦、ショッピングなど、現実世界と同じような活動が可能です。
現在、一般ユーザーに広く普及しているメタバースサービスには、主に二つのタイプがあります：
- ゲーム型メタバース：「Fortnite」「Roblox」「どうぶつの森」など
- SNS型メタバース：「VRChat」「Cluster」など
メタバースへのアクセス方法は多様で、スマートフォンやパソコンからでも可能です。
しかし、より没入感のある体験を得るには、Apple Vision ProやMeta Questのようなヘッドマウントディスプレイ（HMD）を使用することをおすすめします。
飲食業界におけるメタバース活用の5つのメリット
飲食業界がメタバースを活用することで得られるメリットは、主に以下の5つが挙げられます：
1. コロナ禍対策としてのオンラインシフト
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの飲食業界企業が従来のマーケティング・プロモーション活動に打撃を受けました。メタバースを活用することで、実店舗で行っていたマーケティング施策をオンラインへ効果的にシフトすることが可能になります。
2. 幅広い顧客層へのリーチ
メタバースの特徴として、「いつでも、どこからでもアクセスできる」という点が挙げられます。
これにより、地理的な制限なく幅広い顧客層にアプローチすることができます。
特に、デジタルネイティブ世代との接点を増やすことができるため、若年層の顧客獲得に苦戦していた企業にとっては大きなチャンスとなります。
3. メタバースならではの体験による訴求力向上
メタバースを活用することで、従来のオンラインマーケティングでは難しかった商品の訴求力を向上させることができます。
具体的には以下の2点が挙げられます：
- 3Dモデルを活用した視覚的訴求力の向上
- メタバースならではの新しい購買体験の提供
4. ブランドロイヤリティの強化
メタバースを活用することで、ブランドの世界観をより深く体験してもらうことができます。
3次元空間上でのインタラクティブな体験を通じて、ユーザーとブランドの結びつきを強化することが可能です。
5. バズマーケティングの可能性
メタバースを活用したマーケティング施策は、その新規性や体験の面白さから、SNSなどでシェアされやすい傾向にあります。
これにより、広告宣伝費以上の効果を得られる可能性があり、強力なバズマーケティングにつながる可能性があります。
飲食業界におけるメタバース活用の3つの展望
メタバース技術の発展に伴い、飲食業界には以下の3つの大きな変化が予想されています：
1. マーケティング手法の変革
メタバースの特徴を活かした新しいマーケティング手法が登場すると考えられます。
3Dコンテンツを活用し、スタッフによる直接的な商品説明など、従来のオンラインマーケティングとは一線を画した体験を提供できるようになるでしょう。
2. NFTを活用した新たな収益源の創出
メタバース空間へのアクセス権をNFT（非代替性トークン）として販売することで、新たな収益源を確保できる可能性があります。
これにより、顧客エンゲージメントの向上にも繋がると期待されています。
3. バーチャルツアーの普及
メタバースを活用することで、ワイナリーや醸造所、飲食店の施設内を案内するバーチャルツアーがより身近になります。
従来の動画によるオンラインツアーと比較して、よりリアルな体験を提供できる点が強みとなります。
レストランなど飲食業界のメタバース活用事例9選
1. マクドナルド：VRヘッドセットのプレゼントキャンペーン
スウェーデンのマクドナルドは、ハッピーセット販売30周年を記念して、ダンボール製のVRゴーグル「Happy Goggles」をハッピーセットのおまけとして提供しました。
これは、Google Cardboardと同様の仕組みで、スマートフォンと組み合わせることでVR体験が可能になります。
また、メタバース関連の特許出願を行い、業界に衝撃を与えたことでも有名です。
具体的な実装はまだ計画段階ですが、McDonald'sのような大手企業がメタバースに本格参入することで、業界全体の動きが加速する可能性があります。
2. モスバーガー：メタバース上でのハンバーガー作り体験
モスバーガーは、VRChatというSNSメタバースプラットフォーム上に仮想店舗をオープンしました。この取り組みは、新商品「月見フォカッチャ」の発売に合わせて行われ、仮想店舗は月面に設置されました。また、都内の一部店舗では、VRゴーグルを使用したメタバース上でのハンバーガー作り体験会も開催されました。
3. KFC：中国発のメタバース戦略
フライドチキンで世界的に有名なKFCは、中国市場を中心にメタバース戦略を展開しています。
QQプラットフォームとRobloxでの仮想店舗展開は、デジタルネイティブ世代を取り込む狙いがあります。
4. ドミノピザ：AR技術を使用した世界のチーズ体験
ドミノピザは、AR（拡張現実）技術を活用して、世界中のチーズを巡る仮想旅行体験を提供しました。ユーザーは専用のARカメラを通じて、世界各地のチーズの特徴や楽しみ方を学ぶことができます。この取り組みは、チーズピザの販売促進を目的としています。
5. Dave & Buster's：Robloxで広がるゲームの世界
「eatertainment」というコンセプトで知られるDave & Buster'sが、Roblox上に「Dave & Buster's World」を展開しました。
食事とアーケードゲームを組み合わせた独自の魅力を、仮想空間でも再現しています。
6. TGI Fridays：VRを活用したプロモーションキャンペーン
アメリカのカジュアルダイニングレストランチェーンTGI Fridaysは、新メニューのプロモーションの一環として、世界初のバーチャル犬ぞり体験を提供しました。さらに、SNSを活用したクイズキャンペーンも同時に展開し、多くの参加者を集めることに成功しました。
7. Chipotle：Roblox上でのゲーミフィケーション
メキシコ料理チェーンのChipotleは、人気ゲームプラットフォームRoblox上で「Burrito Builder」というゲームを提供しました。プレイヤーはゲーム内でブリトーを作ることで「ブリトーコイン」を獲得し、これを様々なゲーム内アイテムと交換することができます。
8. Wendy's：メタバース上での店舗展開
ファストフードチェーンのWendy'sは、Metaのメタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」上に「Wendyverse」というVR体験スペースを開設しました。ユーザーはこの空間内で店員体験をしたり、他のユーザーとコミュニケーションを取ったりすることができます。また、様々なミニゲームも用意されており、ゲーム内で使用可能なフードチケットなどが獲得できるチャンスもあります。
9. PATRÓN Tequila：Decentralandで味わう高級テキーラの世界
プレミアムテキーラブランドのPATRÓN Tequilaは、分散型仮想空間プラットフォーム「Decentraland」でユニークな体験を提供しています。
高級アルコール製品の販売という特性上、現実世界との直接的な連携は難しいものの、ブランドの世界観や製品の魅力を仮想空間で表現することで、新たな顧客層の開拓や既存ファンとの絆を深める取り組みとなっています。
まとめ：飲食業界におけるメタバース活用の未来
以上、飲食業界におけるメタバースの活用事例と展望について見てきました。
メタバースは、単なる仮想空間ではなく、飲食業界に新たな可能性をもたらす革新的なプラットフォームであることがわかります。
今後、メタバース技術がさらに発展し、より多くのユーザーがアクセスしやすくなるにつれ、飲食業界におけるメタバースの活用はますます広がっていくことでしょう。
- リアルとバーチャルを融合した新しい顧客体験の創出
- 若年層を中心とした新規顧客の獲得
- NFTやブロックチェーン技術を活用した新たなビジネスモデルの確立
- バーチャルツアーやオンラインイベントの高度化
飲食業界に携わる企業や個人事業主の皆様は、これらのトレンドを踏まえ、自社のビジネスにメタバースをどのように活用できるか、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
メタバースは、まだ発展途上の技術ではありますが、早期に参入することで、競合他社に先んじて新たな市場を開拓できる可能性があります。
最後に、メタバースの活用にあたっては、単に流行に乗るのではなく、自社のブランド価値や顧客ニーズに合致した形で導入することが重要です。
また、プライバシーやセキュリティの問題にも十分注意を払う必要があります。
メタバースは、飲食業界に新たな革命をもたらす可能性を秘めています。
この新しい技術の波に乗り遅れないよう、今から準備を始めることをおすすめします！